統一教会は3月4日に宗教法人格を失い、清算手続を行う清算法人となりました。今後の見通しについては、同日に清算人の伊藤尚弁護士が行なった記者会見で示されています。詳細については、清算人のホームページのFAQに記されています。ここでは特に統一教会2世にむけて情報をまとめます。
清算手続とは
清算手続は、現務の結了、債権の取立て及び債務の弁済、残余財産の引渡しという三つの業務からなっています(宗教法人法49条)。これはつまり、現在進行中の業務を終わらせ、財産を整理して、残りを所定の団体に移すということです。
被害に対する弁済
統一教会が弁済すべき債務のなかには、法人による不法行為の被害者に対する損害賠償債務も含まれています。その点、統一教会の被害者は債権者であると言えます(民法709条)。経済的被害だけではなく、宗教虐待等による精神的被害についても考慮されます(同710条)。
被害者が弁済を受けるためには、訴訟や和解の手続きを通とおして、被害が被害として認められる必要があります。債権の申し出についての詳細は今後、清算人のホームページに記載されることになります。
なお、訴訟の提起と債権の届出は並行して行うことができます。つまり並行して統一教会に対する既存の集団訴訟に加わり、判決によって債権を確定させることも可能です。
被害認定の期限
清算人は債権者に対して債権の届出をするよう、2025年5月4日までに官報での公示を行います。そして、おそらくは5月中旬ごろから一年ほどの期間をとって、損害賠償請求を含む債権の届出が受けつけられます。その後は残余財産の引き渡しがはじまり、清算が結了します。そこで被害を訴えることのできる法人が消滅することになります。
清算後の見通し
文部科学省による2025年10月の指針には「清算法人の財産を基礎に、清算結了後に顕在化する被害者を救済するため、被害者に対する弁済を公平・中立的な立場で担う財団を設ける等して、潜在的な被害の回復を図る措置を講じるなどの対応を検討することも考えられる」と記されています。このことについての見通しは不透明なままです。
結語
清算手続きに関して、特に被害の認定に関しては、まだそれほど多くの情報が出回っていません。詳細については、清算人への問い合わせをすることが確実です。しかし、プライバシーポリシーについて不透明な部分もあるため、その点での懸念がある場合は、全国統一教会被害対策弁護団のような第三者団体に匿名で相談をすることもできます。
統一教会の解散以来、業務や財産の後始末をするための清算というものが行われています。その一環として教会の被害者には約一年の猶予が与えられ、その期間にかぎり損害賠償請求ができることになりました。私たち2世はそこであらためてさまざまな困難に直面することになるでしょう。ここでは被害というものにまつわる二つの困難について述べます。
第一に、被害を被害として自覚することの困難があります。自分を被害者として認識することは決して愉快な経験ではありません。ともすると自分の無力を認めることにもなりかねず、人生に関わる被害の場合にはそれまでの自分を否定することにもつながっていきます。そのため、第三者からみて被害者であっても当の本人は自分の被害を認めることができない、といったことが往々にして起こります。被害者であることと被害を自覚することの間には大きな溝があるのです。これは世代や信仰の有無をとわず、統一教会に関わることになった大半の人の共通して抱える困難です。潜在的な被害者の数は計り知れません。いまは現役の信者であってもいつかどこかで認識を改めるようなことも充分にありえます。しかし問題は、清算手続において被害の届出の猶予は一年しか与えられないということです。
第二に、被害を金銭で片付けられることの困難があります。私たち2世が人生をとおして受けてきた全人的な被害を金銭に換算することは不可能です。被害は後遺症を含め、一生にわたって続くことも考えられます。それに対して清算における損害賠償とはそもそも、これまでの被害を値踏みして片を付けるということ、その後の法的責任を放棄するということです。清算人が非道だという話ではなく、それが清算という職務なのです。清算にはさまざまな障碍を抱えた私たち2世への福祉の視点がありません。その点、両者はたがいに相容れるものではありません。これから被害の届出をする2世の多くは、提示された金額の低さとこれまでの自分の苦しみとの落差に戸惑うことになるかもしれません。このように、被害を自覚することと被害の金銭換算を受けいれることの間にも深い溝が横たわっています。
では、清算の終わりまで残されたわずかな期間のなかで、私たち2世はどうすべきでしょうか。この問いに答えはありません。統一教会2世清算連絡会自身も手探りの状況のなかにあります。しかし、ただひとつ言えることがあります。清算は私たちがたがいに仲間として繋がりあうことのできる最後の大きな口実になるのではないか、ということです。清算の是非はともかく、清算に関して情報共有をしていくだけでも、それが将来のつながりの糧になるかもしれません。統一教会は私たちの人生に計り知れない被害を与えていきましたが、同じ境遇の2世の仲間とつながりあう余地が残されることになったことだけは確かです。
どのような立場の2世でもかまいません。匿名でも大丈夫です。信仰の有無にかかわらず、どうか連絡をしてください。あるいは、ニュースレターに登録してください。どうぞよろしくお願いします。